指輪を捨ててまで愛して欲しい時がある
「君が愛してくれるようには、僕は君を愛せない。」
彼と問題があると僕はいつも、「性格が合わないからだ。」と簡単に結論付けようとするところがあり、彼は「そう簡単に性格が合わないって考えるな。話し合って、お互いどう変われるかを考えろ。」と言います。言ってることは間違いではないと思います。が、、、
それは先週の金曜日のこと。僕の携帯にタイ人の音楽友達からかかってきた電話を巡って言い合いをしたときに、「てっとは自分から進んで友達のことや、何をしているのかを話してくれない。」と、以前にも同じ内容の言い合いをしたことをまた掘り返してきました。前の喧嘩以降、僕は以前より更に気を使って、友達と遊びに行く時には前もって詳細を伝えたり、「今、こんな知り合いが出来たよ。」と話して一緒に会ってもらったりと、僕の考える限りのベストを尽くしているつもりだったんですが、それでも前と同じ指摘をされ、自分の範疇を超える要求をされたと思ったことに対し、思わず言ってしまったのが先の1行目の台詞です。
そしてその夜、久しぶりに一緒にディスコへ出かけた時に、初めて吸わないタバコを彼が僕の横で当然のように吸っていたので、ちょっとムカッときた僕は黙ってディスコの外に出るとすかさず彼が追いかけて来て、そのことを詫びてきたので僕は、「気にしなくても中に戻って友達と楽しんでおいでよ。僕は少し新鮮な空気を吸いたいから。」と精一杯怒るのを我慢して言ったのですが、僕の顔に怒っているのが表れていたらしく、それを察知した彼はなぜか逆ギレしたみたいで、通りのほうへと去って行きました。それをキョトンと見つめる僕。「あぁ、一人で帰っちゃうんだ。」となぜか冷静になっていた僕は、しばらくして大通りを家の方へと一人で歩き出しました。歩き出して10分くらいすると、後ろからドタドタと彼が顔中汗まみれで走って来て僕の腕を掴む。息を切らしながら少し苦しそうに彼は、「こんなに好きなのに、どうして君は僕の事を愛してくれないんだ。」と嗚咽まじりで僕に訴えかけてくる。不意にそう言われてビックリした僕はキョトンとして何も言えないままでいると、急に僕の薬指から以前、彼がお揃いで買ってくれたペアの指輪を抜き取り、彼の指輪と合わせて柵の向こう側へ投げてしまいました。
彼は僕がどんなに性格が悪くても、口うるさくても、どんなに怠惰な人間でも、浮気をしなければ、好きだという気持ちは変わらないという。この先の人生も一緒に歩んで、将来はコンドミニアムを買って一緒に住んで幸せな生活を送るのが彼の人生の青写真だそう。いつかそんな気持ちも変わるのかもしれないですが、今のそんな彼の包容力には、ただただ感謝し、頭が下がる思いです。彼が僕を愛するが故に、僕の行動一つ一つが不安にさせたり、悲しませたりしているのは十分承知の上なのですが、いかんせん僕の彼に対する愛情の強さが彼のそれと比べると弱いので、一緒にお互い気持ちよく同居生活が出来る様な工夫は出来ても、「彼のために何かをしてやろう。」とか「彼に好かれる性格になろう。」とか中々出来ません。もし彼をもっと凄く愛しているんなら出来る様なことを。だから毎度、同じ様な内容で喧嘩するんだと思います。問題は僕のほうにあるんです。
なんで彼はあの時指輪を捨ててしまったのか?指輪と共に彼のやるせない気持ちも捨ててしまいたかったのかもしれません。どうしたら彼をもっと愛せるのだろう?どこにも答えが見つからない。